タイのバックオフィス業務管理とは
日系企業がタイでビジネスをする際の主要目的は通常自社の製品やサービスの販売や、工場を設置しての製造といった業務をおこなう事であり、総務・人事・経理といったバックオフィス業務は当然にその主要目的にはなることは少ないでしょう。
一方で、バックオフィス業務は企業の運営にあたって避けて通れないものですし、これがうまく回らないと主要目的の達成にも悪い影響がでる場合もあります。そこで本稿ではタイでバックオフィス業務管理をする際に知っておくと役に立つ3つのポイントについて解説します。
① 従業員が辞めるかもしれない前提で管理をするのが大切
バックオフィス業務にはタイの規制やタイ語が多く絡むため、日本人駐在員が自分で実際に行うことは少なく、多くの日系企業はタイ人従業員にやってもらっていることかと思います。一方、タイでは日本に比べて従業員がよく辞めます[1]。このため、社内で一人しかできない業務をたくさん作ってしまった挙句、その方が辞めてしまった、という事態が発生すると、バックオフィス業務が回らなくなるということが発生します。
例えば経理の担当者が辞めてしまうと、税金の計算・支払が滞り、罰金の対象になってしまう、といったことがありえます。単一の業務でも複数の業務担当を置いたり、マニュアルを作ったりと、従業員が辞めてしまったときに困らない仕組を構築することが求められます。
② ブラックボックス化してしまうリスクを念頭に
幸運にもタイ人従業員が辞めない場合でも、単独の担当にあまりにも長く業務を担当させてしまうと、ある業務についてその人しかやり方がわからない、というブラックボックス化が発生します。業務がうまく回っているのであればよいかもしれませんが、場合によっては不正の温床になったり、業務プロセス改善を行う場合の抵抗勢力になってしまったりする場合があります。
例えば筆者自身も、経理業務がブラックボックスした結果、その業務をおこなっている経理マネジャーしかわからない事項が増えてしまい、他の誰もそれが正しいか否かを確認できない状況になった結果、経理マネジャーが日本人駐在員の言うことを全く聞かなくなってしまった会社を見たことがあります。業務の透明性を確保する取組が必要になるでしょう。
③『タイではこうなんです』はあまり信じない方が良い
バックオフィス業務をおこなっているタイ人従業員に、『なぜこの業務はこのようにしているの?』と聞いた際、このセリフが出たら要注意です。タイの規制に準拠するためのバックオフィス業務であれば根拠となる法規制が存在するはずですし、それ以外の業務についても実施にあたって自社にとって合理的な理由が存在するはずで、タイだから、というのは理由になりません。
例えばある顧客で日本人駐在員が小口現金の使用を廃止しようとしたところ、経理マネジャーからタイでは現金を使用するのが普通だ、と抗弁され、よくよく聞いてみると、ちょっとした買い物や移動が発生した際の立替金を、小口現金がないとすぐ清算できなくて不便だから、という理由だった、ということがあります。このケースで最終的に小口現金を廃止するかというのは会社の判断でしょうが、少なくとも『タイではこうなんです』というのは正しくありません。こういわれたら、さらに質問をするようにしましょう。
どうすればよいのか?
上記から示唆されることは、社内でバックオフィス業務をおこなうことには一定のリスクがあるということです。勿論社内に知見がたまるといったメリットもあるでしょうが、これらのリスクを受容して社内でバックオフィス業務を行うかというのは経営上も重要な判断になるでしょう。一部の業務を外注したり、必要に応じて外部の専門家の意見を聞く、というのも有効な策になりえるかもしれません。本稿が皆様がタイでビジネスをする上での一助となれば幸いです。
[1]なぜタイ人は簡単に会社を辞めてしまうのか? (2023) TJRI https://tjri.org/the-reasons-for-thais-resignation/
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