日本のSDGsへの取り組みの現状
以前にも当コラムでも取り上げたことのあるSDGs(Sustainable Development Goals:国連の定めた持続可能な発展目標)のテーマですが、限られた紙面で用語の解説に終わってしまった感があり、重要なテーマですのでもう少し具体的な内容について触れたいと思います。
国連が今年6月に発表した「Sustainable Development Rport2022」によれば、2022年度の日本全体の国際順位は19位で、2017年の11位を最高位に年々下降しています。貧困の解消や教育の質等の分野では進捗を認められたものの、他の多くの目標ではまだ道半ばであることが客観的な評価のようです。
この評価は日本政府、企業、NGOや民間の非営利団体等の総合評価ですが、それではこれらの主体の中で大きな役割を担っている企業の現状はどうなのか、もう少し見ていきたいと思います。
大企業ほど熱心だが。。
企業と一口で言っても業態や規模が様々なのですが、ここでは規模に着目して規模別の日本企業のSDGsへの取り組みを見てみると、大企業の概ね5割強はSDGsへ積極的に取り組んでいるものの、中小企業ではまだ3割程度であり、また中小企業の4割程度は取り組みを検討すらしていないが実情のようです。
まだ取り組みすら開始していない企業の理由として、「費用がかかる」、「取り組みメリットが明確でない」、「対応する人員が十分にいない」などが挙げられていますが、全般的に費用や負担感の方が大きいという先入観が強い印象です。
ここで再度一見負担増の思われるSDGsへの取り組みについて、何のために企業が取り組みを検討しなければいけないのか、改めて考えてみたいと思います。
メリットよりも経営戦略の基軸として考える必要がある
まずSDGsに積極的に取り組むことで、企業イメージの向上が期待出来ます。今の優秀な若い世代は地球環境問題や人権問題に非常に敏感な感度を持っています。どの企業も人材の採用とリテンションに苦労している昨今、SDGsへ積極的でないと採用候補者や優秀な社員から判断されているなら、今後人材採用、リテンション面で大きな困難が待ち受けていると言っていいでしょう。
反対にSDGsへ積極的と思われれば、従来以上に人材の採用やリテンションにプラスに働きます。私自身は人材確保に悩む多くの日本企業にとっては人材面のメリットが最大と考えています。一方で多くの大企業、特に大手製造業はSDGsへの取り組みの一環として企業グループ外も含めたサプライチェーン全体でのカーボンゼロを目標とし始めています。この事は、SDGsの柱でもある環境問題に取り組まなければその一点で近い将来主要取引先を失う可能性すらあることを意味しています。
他にもSDGSへの積極的な取り組みを行う事でESG(Environment Social Governance)を投資の判断基準とする投資家からの資金調達をしやすくなる、社員の環境意識が高まることで節電につながりオフィス、工場での光熱費の削減につながるといった効果も期待できます。昨今はSDGSへの熱心な取り組みを行う企業や団体同士で業種業態を超えたコラボレーションの事例も出始めており、従来の延長線上にはない新しいビジネスモデルの開発も期待されています。
今後の企業の取るべき対応
SDGsに取り組もうと考えたはいいけど、多くの企業は費用と便益のバランスに悩んでいるのが実情かと思います。しかしSDGsへ取り組むことは何も大型の設備投資を意思決定するわけではありません。
まずは自社の経営理念、事業特性とSDGsの17のゴールを照らし合わせて何が自社にとって取り組みやすいテーマなのか議論を社内で、特に経営レベルで議論を開始することはすぐにでも始められるはずです。
その上で身近なところから、たとえば自社の地域社会への支援活動をスモールスタートしていろいろと課題を抽出して経験値を蓄積し、同時に自社のSDGsへの取り組みを外部に積極的に発信していけばいいのです。すでに様子見の段階は過ぎていることは改めてお伝えしておきたいと思います。
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