
実は奥深い経費精算の世界
会社にお勤めの方で経費精算を行ったことがない方はいないと思います。昭和の時代には経費精算書式のような紙がオフィスにあり、金額を間違えないよう丁寧に記入押印して提出し、承認されて自分の銀行口座に申請額が振り込まれたときはほっとしたものです(かなり昔の話しで恐縮です)。
現在でも各社各様に会社にお勤めの方は経費精算を行っていると思いますが、実は単純な仕組みに見えて結構奥が深いので今回はこのテーマを取り上げたいと思います。今まさに経費精算を行おうとしている方にも、実はあまり考えずに行ってきた経費精算に御社の歴史の歩みが刻まれていることに思いをはせていただければ幸いです。
経費精算システムの進化
社員は顧客訪問のために交通機関を利用したり業務に必要な書籍を購入したり、時には研修で宿泊や飲食を行います。多くの場合、社員はその都度こうしたサービスを提供している企業に立て替え払いを行い、後日経費精算を行って自社に立て替え分を請求しています。
利用日付、利用内容、支払先、目的等、どの項目も正確に記載の上証拠としての領収書等の添付が求められますが、正確に記載されているからと言ってそのまま自動的に請求金額が社員の銀行口座に振り込まれるわけではありません。多くの場合申請は領収書を添付した書類かワークフロー等によって経理部にまわされ、経理部の経費精算担当者が内容をチェックして問題なければ支払担当者にまわされます。
日本では2022年から施行された電子帳簿保存法によって領収書等の原本の保存が不要になったため(電子データでの一定年数での保存義務はあり)、専用の経費精算システムが注目を集めるようになりました。経費精算システムにも自社にパッケージを導入するオンプレミス型のタイプやクラウド上でSaas型で提供するタイプのものまで幅広くあります。
DXの入り口として取り組みやすくて導入効果がある程度明確なことから、まだ従来の紙ベースやEXCELを利用したワークフロー等で経費精算を行っている企業で導入の検討がすすんでいるようです。
効率化と不正防止のせめぎあい
一方で経費精算業務の効率化がすすむのは結構なことですが、不正防止のためのチェックは従前通り経理部の担当者が行っているのが実情です。出張費の水増し請求等、古典的な手口の余地は経費精算システムを導入してもそのまま残るからです。
不正防止を厳しく行おうとすれば効率は落ち、その逆もしかりです。先進的な企業では不正検知のしくみとしてAIを導入をしていると聞きますが、それではどうやってAIに不正検知のパターンを学習させるのか、AIで人間と同じレベルでチェックができているのか、現状ではまだ課題は多いようです。もっとも公認会計士による監査の世界でもAIの適用範囲は広がりつつあり、今後のトレンドになることは間違いないと思われます。
DXの進捗を考えながら
昨日利用した地下鉄の金額はいくらだっけ。。そんな事を思い出しながら今日も私は経費精算システムに実績を入力しています。いろいろな企業のDXへの取り組みを見てきましたが、DXへの取り組みが全社的に積極的な企業は経費精算のシステム化も概ね早く進んでいる印象です。今度経費精算を行う際、自社の経費精算処理がどの程度システム化されているのかを確認することで御社のDXの進展具合がどの程度か、思いをはせてみてはいかがでしょうか?
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