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タイ居住者に関する国外源泉所得の課税範囲の拡大について


タイの会計業務

今回は趣向を変えて、タイの税法に関するアップデートをお届けします。


タイ居住者に関する個人所得税課税範囲とは


 タイの税法において、タイ居住者に関する個人所得税課税範囲について以下の通り示されています[1]


・ タイにある年に180日以上滞在するとその者はタイ居住者になる。


・ タイ居住者について、タイで稼得した所得(タイ国内源泉所得)についてはどこで支払われていようとタイで個人所得税の対象になる。


・ タイ居住者について、外国で稼得した所得(タイ国外源泉所得)についても、タイにその所得を持ち込んだのであれば、その際にタイで個人所得税の対象になる。


どのように拡大されたのか


 タイの税法において、ここでいう『外国で稼得された所得』というのは、いつ稼得された所得までをいうのか、といった説明はなされていません。この点、従前タイ歳入局は、その所得を稼得した年度においてその所得をタイに持ち込んだ場合にのみ課税対象とする、という解釈を適用していました。他方、2023年9月15日にタイ歳入局から示された新たな解釈指針において、その所得を稼得した年度がいつであるかに寄らず、その所得をタイに持ち込んだ場合に課税対象とするという旨が示されました[2]


 この結果、タイ居住者については、所得を稼得したのが何年前であろうと、外国で稼得した所得をタイで持ち込んだ段階でタイで課税されるように課税範囲が拡大されたことになります。言わずもがなですが、これによってタイ居住者のタイ国外源泉所得に対する課税範囲が広がることになるので、タイ居住者にとって不利な変更になります。この解釈指針は、2024年1月1日以降タイに持ち込まれる所得に適用されます。


どうすればよいのか


 現実の課題として、タイ歳入局がこのような所得の持ち込みをどのように検知するかについての疑念は依然として存在します。また、これは法令ではなく、あくまで『解釈指針』であり、実際の税務実務がどのように変わっていくのかは不明です。しかしながら、明示的な解釈指針が提供されたことにより、従来は個人所得税の対象にならなかったタイ国外所得に対するタイ居住者への個人所得税課税の可能性が生じたことをまずは理解すべきでしょう。


 そして、タイ歳入局との争いを避けるためには、タイ居住者のステータスになった方は、タイにそういった所得を持ち込まないようにするというのが次善の策になります.。この解釈指針は『今後、タイ居住者はタイ国内源泉所得・タイ国外源泉所得の全てが無条件でタイにおける個人所得税の対象となる』と言っているわけではなく、タイ国外源泉所得があったとしても、それをタイに持ち込まないのであれば、タイでの個人所得税の対象にはならないと思われるためです。いずれにしても、今後の課税実務に注意する必要がありますので、情報収集に努めて下さい。本稿が皆様がタイでビジネスをする上での一助となれば幸いです。

[1]タイ歳入法典第41条(タイ語): https://www.rd.go.th/5937.html#mata41  [2]Departmental Notification No. Por. 161(タイ語): https://www.rd.go.th/fileadmin/user_upload/kormor/newlaw/dn161A.pdf


【免責事項】

本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。


 

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