タイの移転価格税制について - 日本との違いに注意
- 深澤 チトラートン
- 5月2日
- 読了時間: 4分
更新日:5月6日

タイの移転価格税制の留意点
業績が良好で決算時に売上が増大する、会社の吸収合併によって売上が倍増するなどから、その事業年度の売上が2億バーツ以上になった場合、移転価格税制に該当する可能性があります。日本とタイでは移転価格税制が異なっていますので、気をつける必要があります。今回、この移転価格税制について、説明したいと思います。
タイ移転価格税制の対応
タイの移転価格税制は2019年度税制改正で本格導入されました。タイ企業も関連者間取引の価格決定に独立企業間原則(Arm's Length Principle :ALP)が適用され、関連者間の取引価格の正当性を示す移転価格文書化義務の他、関連者の定義に該当し且つその事業年度の総収入が2憶バーツを超える場合には、法人税確定申告書(P.N.D.50)の付表として「関連者に関する情報および相互間の取引金額の明細書(Transfer-pricing Disclosure Form)」を歳入局に申告する義務が生じます。この義務を怠った場合、歳入局から最高20万バーツの罰金通知書が当該企業に送付されます。
移転価格とは
タイ歳入局は「企業間の取引で、商品売買やサービス提供において、市場価格または独立企業間価格(Arm's Length Price)とは異なる価格を設定することを移転価格(Transfer Pricing)」と定めています。
また、歳入局通達第Por. (ポー) 113/2545により、「市場価格または独立企業間価格」とは、資産譲渡、役務提供または金銭の貸付けを行う場合において、独立当事者間(独立企業間)が資産の譲渡、役務提供または金銭の貸付けを行う日と同一または同種の業務において公正に設定すべき対価、役務報酬または利息の額をいい、「独立当事者間(独立企業間)」とは、直接・間接を問わず、経営、支配、共同投資において互いに関連のない当事者(企業)を意味しています。
移転価格税制
前述に基づき、関連企業間の取引価格を操作し、意図的に一方の会社から他方の会社に利益を付け替える事を防止するための制度です。万一、関連企業間の取引価格が異常性を示した場合、税務調査官はその取引を市場価格で行われた取引として、収益及び費用を再計算し、税額を計算し直すことができます。
日本の移転価格税制は、国外関係者との取引が対象で、日本国内取引との取引には適用されませんが、タイでは国内関連者についても適用されるため、本制度と対象者等を理解する必要があります。
関連者の定義(歳入法典第71条2項)
(1) 他の法人の株式を、直接または間接に、登録資本総額の50%以上保有している法人。
(2) 一株主が、ある法人の50%以上の出資者であり、かつ別の法人の50%以上の株式を保有し、両法人間で同一株主が支配する取引がある場合。
(3) 資本、経営、支配などの面で相互に関連しており、一方の法人が他方の法人から独立して活動することができない法人。
罰金事例
一会計年度の売上高が2億バーツの企業で、関連者の定義に該当していると理解せず、法人税確定申告時に「関連者に関する情報および相互間の取引金額の明細書/Disclosure Form」の付表を提出していなかったケースに対して、歳入局は、罰則に従い、最高20万バーツの罰金通知書を当該企業に発行した事例が実在します。
万一、罰金通知書が送付された場合、関連者に関する情報等の付表を作成し、速やかに追加申告し、所轄税務署の担当官に丁寧な理由説明を行うことにより、罰金が大幅に軽減されることもあります。
事業年度の総売上が2億バーツ以上になった企業は、是非、日本とタイの移転価格税制の相違点を理解し、決算申告時に会計担当者に確認することをお勧めします。
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