
国内外での役務提供の多様化が進んでいる
ZoomやMicrosoft TeamsなどのWeb会議ツールの普及により、情報発信や役務提供の手段に変化が見られました。これまで、タイ国内のホテルにてセミナー等の開催が主流だった時代から、現在ではオンライン上でのウェブセミナーが増加しました。
オンライン参加者もタイ国内だけでなく、日本や近隣諸国からの参加も可能になりました。音声による電話対応またはメールによる相談もWeb会議システムを活用し、クオリティーの高いコンサルティング業務を提供する企業もあります。また、2022年以降、円安が進行し、タイ企業がタイ国外での研修やセミナーを開催する企画なども増加しています。
本稿では、こうした役務提供の多様化に伴い考慮が必要になっている、役務提供の売上に対するVATの取り扱いについての基本的な考え方を解説します。
役務提供のVATに関する歳入法典
役務提供の売上に対するVATを考慮する際、押さえておきたい歳入法典を3つ挙げます。
歳入法典第77/2条:
タイ国内で提供または使用されたサービスはVAT 7%対象。
歳入法典第80/1条(2):
タイ国内で実施され、海外で使用されたサービスはVAT 0%対象。
付加価値税に関する歳入局長通達(第105号):
歳入法典第80/1(2)条に基づき、タイ国内で実施された役務が海外で使用された場合の種類、基準、方法および条件を特定する事項。
VAT 7% or VAT 0%の考え方と事例
押さえておきたい役務提供時のVATの取り扱いを事例をもとに説明します。
【IN to IN】VAT 7%
タイ国内で役務提供または使用されたサービスはVAT 7%対象になります。
(歳入法典第77/2条)
事例:①タイの法人がタイ国内にてタイの顧客向けのオンラインセミナーを開催した場合。
②タイの法人がタイ国内にてタイの顧客へのコンサルを提供した場合。
③タイの法人が海外の顧客に裁判に関するコンサルを提供し、後日、その顧客はタイで裁判手続きをした場合。
【IN to OUT】VAT 0%
タイ国内で実施され、海外で使用されたサービスはVAT 0%対象になります。
(歳入法典第80/1条(2))
事例:①タイの法人がタイ国内にて海外の顧客にオンラインセミナーを開催した場合。
②タイの法人がタイ国内にて海外の顧客にコンサルを行い、成果物を提出した場合。
【OUT to OUT】Out of VAT Scope/ VAT 0%
海外で実施され、海外で使用されたサービスはVAT 0%対象&VAT申告(P.P.30)不要です。
事例:①タイの法人が海外にてタイまたは海外の顧客に研修・セミナーを開催した場合。
②タイの法人が海外にてタイまたは海外の顧客にトレーニングコースを実施した場合
まとめ
とりあえずVATは納めておいた方が良いという考え等によって、多くの企業はすべての役務提供の売上に対し、VAT 7%を載せ、請求書を発行する企業が多くみられます。しかし、VATの適用を精査することによって、VATの過剰請求、過大納付の問題が無くなります。
【免責事項】
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