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子会社上場のあり方


子会社上場のあり方

NTTによる子会社買収


 日本では連休明け早々に日本電信電話(NTT)によって同社の上場子会社であるNTTデータの完全子会社化が発表され、IT業界のみならず大きな話題となりました。NTTデータは社名の通りNTTの子会社であることは広く知られていますが、それ以上にここ10数年にわたる海外IT企業の積極的な買収によって約20万人のグループ社員の内海外の社員数は約14万人、売上も5兆円弱と日本最大のシステムインテグレーター会社としても非常に有名です。


 このように有名で大きな会社が上場廃止になる事は今後の日本企業の子会社上場のあり方を考える大きなきっかけになると思われますので、今回はこのトピックについて考えてみたいと思います。

 

子会社上場は世界では例外的


 一般に発行済株式総数の過半を上場企業が所有したまま上場する場合、親子上場と呼ばれます。親会社が上場しているのにあえて子会社も上場させるのはいくつか理由があり、親会社と異なる領域で事業を展開する会社の自主性を重視した方が子会社の業績向上が期待できる、子会社単独で機動的な資金調達ができるため迅速な投資意思決定が行える、ストックオプション等を利用した子会社独自のインセンティブプランの設定が可能になる、などが主な理由として上げられます。


 しかし一方で親会社とその他の株主間で利益相反の構図も生まれやすく、例えば今回のように親会社のNTTはNTTデータの株を少しでも安く買いたいのに対し、その他の少数株主は株式を手放さざるをえないのなら少しでも高く買ってもらいたいと考えます。過去に親会社が上場子会社を買収するにあたって買収価格が低すぎるといって親会社とその他の少数株主との間で訴訟になった事案もあるぐらいです。このように親子上場は本来的に利益相反の問題を抱えているため、日本以外の他国の株式市場では例外的な形態とされており、親子上場そのものを認めていない株式市場もあるぐらいです。

 

日本では子会社を上場させる個別の理由があった


 一方、日本ではいまだに多くの親子上場の例が業種を問わず存在しています。私自身は上述した子会社を上場させる理由以外に、日本では年功序列、終身雇用を背景に親会社で適切に処遇しきれなかった方を処遇させるための箱として、上場子会社の役割が大きかったのではと考えています。親会社で役員になれなかったが優秀で永年会社に尽くした方を上場している子会社の役員又は役職者として処遇するというのは過去はもちろん、現在でも大企業の人事ではよく見られる構図です。

 

少数株主の保護と親会社の資本効率向上が主流に


 とはいえ2010年代半ばから上場会社を取り巻く環境は大きく変わりつつあり、上場企業はPBR(株価純資産倍率)1倍割れの解消、最低ROE8%以上の継続的な実現、株主還元の強化等、自らの資金をより効率的に活用することが市場から強く求められるようになりました。


 さらにアクティビストに代表される少数の株式を所有する株主が上場会社に経営施策について直接申し入れをするようになり、また、そもそもグローバル市場で海外の競合会社と伍して投資を行うには大企業といえどもグループの資金を集中させる必要があり、親会社の立場から見ると子会社少数株主に配当等を通じて利益が流出する子会社上場の形態は資本の効率的な活用とはいえない状況になってきました。

 

親子という表現がよくない


 上述したように上場子会社は人事の処遇先としての役割を果たしてきたこともあり、何となく親会社が上、子会社が下という意識が特に大企業では未だに強い気がします。ただそのような感覚では子会社社員のモチベーションは上がりませんし、外部から優秀な人材を集められるはずもありません。親子という表現も正しくなく、単に出資する側とされる側というだけの話しで本来上下関係などないはずです。


 グループの経営戦略を遂行する上で子会社の形態をとる合理性があるから子会社の存在があるわけで、上場している方が合理性がある場合があるのであれば子会社上場を続ける意義は今後もあると思います。今後どのようなグループ経営の形態が出てくるのか、引き続き注視したいと考えています。


 

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