損金不算入と税金の関係について
法人税の節税対策として、ゴルフ会員権購入や決算期をまたいで発生した費用の一括計上、就業規則の規定を超えた慶弔金の支給、接待費や社内飲食代等の費用計上を相談されることがあります。確かに、会社の費用として会計処理はできますが、法人税計算において、それらの費用は全額または一部の損金不算入の費用(Add Back Expense/ค่าใช้จ่ายบวกกลับ)として取り扱われるため、結果的に節税にならないことがあります。
損金不算入とは
損金不算入とは、企業活動の支出または費用のうち、法人税計算する上で、費用として認められないものをいいます。
例えば、資本金2,000,000THBの会社で2024年度損益計算書の総売上高10,000,000THBに対し、年間交際費100,000THBが計上されました。
決算時の法人税計算において、この交際費100,000THBは、税法上、損金として認められる限度額は総売上高10,000,000THB×0.3%=30,000THBで、限度超過額70,000THBは損金不算入の扱いになります。
損金不算入項目
法人税計算において、タイ歳入法典第65条の第3項に会計上の費用を税務上の損金として認めない20項目が規定されています。代表的な損金不算入(または一部、損金不算入)の項目は下記のとおりです。
(1) 見積費用
予定計上の退職給付引当金、賞与引当金、貸倒引当金の繰入額、減損損失等。
(2) 交際費またはサービス費の限度超過額
総売上高または資本金のいずれか大きい額の0.3%(※)を超える部分の金額。
※上限1,000万THB
(3) 減価償却超過額
(4) 期ずれ
当該決算期ではない前年や翌年の費用。
(5) 税金
刑事罰による罰金、追徴課税(加算税、延滞税)、法人税、付加価値税等。
(6) 個人的費用と贈与、国が認めた公益事業以外の慈善事業への支出
(7) タイでの事業に関係のない支出
日本の親会社の経費とすべきものをタイの子会社の経費にした場合等。
(8) 代金の受取人が特定できない費用、領収書等の記載不備または領収書未添付。
特に項目(8)に関しては、会社に提出するエビデンスのルールを策定し、従業員や経営者の意識と努力によって、損金算入にすることができます。
損金不算入と税金との関係
損金が多ければ多いほど、所得金額 (法人税計算上の収益-法人税計算上の費用) は少なくなり、会社が支払う法人税も少なくなります。しかし、その損金の中に不算入に該当するものが多く含まれている場合、法人税計算上の費用として控除ができず、所得金額が増加し、必然的に法人税も増加します。参考事例を以下に示します。
この事例では会社の業績は赤字であり、損金不算入項目がない場合、当期純損失は所得金額▲1,000,000THBになり、法人税は発生しません。しかし、法人税計算時に、税法上の損金不算入は1,500,000THBであるため、所得金額500,000THBが算出され、法人税100,000THBが発生します。
このように損金不算入と税金の関係を理解しておくことが重要で、法人税計算の際に詳細を確認する必要があります。
【免責事項】
本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。
「タイはなんでこんなに月次の決算が遅いんだ!」
「タイはなんでこんなに経理スタッフが多いんだ!」
タイで働き始めた日本人の方とお話させて頂くと、このような課題を挙げられる方が多くいらっしゃいます。
タイで決算が遅くなる原因は何か?
社内業務の効率化に向けた予備知識として、知っておきたいタイの会計・税務を動画にしました。お時間のよろしいときにこちらもご視聴頂けましたら幸いです。