top of page

日本とタイの会計実務の違いと課題


日本とタイの会計実務の違いと課題

タイの会計実務における課題

 タイで事業活動を行う日系企業からよく聞く問題点としては、

  • 優秀な会計人材の確保が難しい

  • 日本と異なる関係法規のため適切な会計処理ができているのか不安

  • 税務当局から根拠の無いみなし課税や還付金の遅延が発生する問題

などの課題があげられます。


優秀な会計人材の確保

 自社で経理処理を行う場合には、タイ人スタッフでCPDライセンスを保有するスタッフを直接雇用するか、会計事務所等に外注委託をすることが会計法等で義務付けられています。このCPDライセンスは日本の税理士資格に似たライセンスですが、日本とは異なり試験合格を条件としたライセンスではなく、大学等で会計を専攻し卒業したことを条件に申請ができるライセンスです。ライセンスを保有し続けるためには一定のセミナー受講等はありますが、会計・税務に関する実務経験が無い新卒者から、税務当局とのやりとりや、BOI企業の税務申告書を書くことのできるレベルまで様々です。


 経理処理が複雑で、複数の経理スタッフを雇用する必要のある企業であれば、マネージャーレベルからアシスタントレベルまで複数人CPDライセンス保有者を社内雇用することも可能ですが、多くの日系企業の場合、間接部門に多くスタッフを抱えることは難しいことが現実です。特に会計実務+語学を求めると高額な給与水準となってしまいます。


 社内でCPDスタッフを直接雇用するメリットとしては、日々の会計処理が早期に対応できるので、財務諸表確認等、素早い経営判断ができることや、社内に会計スタッフがいることで経営方針や会計処理判断などが早期対応できることです。


 デメリットとしては、退職されてしまった際の対応や、常駐する日本人が経理スタッフの能力判断をしにくい点などがあげられます。


 社内の人員、給与、本社側からの経理面のサポートなど総合的な判断が必要ですが、タイの企業数とCPDライセンス保有者の数を比較すると職業会計人の方が圧倒的に少なく優秀な人材確保は難しい状況となってしまうことも日系企業にとって課題の一つでしょう。


タイと日本の異なる関係法規

 世界的な動きとして会計基準の統一が進んでおり、タイにおいても国際会計基準への移行が進んでいますが、いまだに「会計側」からのアプローチではなく「税務側」からのアプローチで仕訳処理をするタイ人スタッフが多く、なかなか世界標準として財務諸表を比較する事ができにくく、適切な会計判断がしにくいことが多いのがタイの会計でおこりやすい問題点です。特にタイにおいては税法上損金不算入経費となる規定が多く日本では見慣れない、損益計算書上に「損金不算入経費」という科目が存在します。


 サービスや賃貸料における源泉税処理等の関係や年次法人税申告書のフォーマット等の関係で日本よりも勘定科目が多くなることも多く、日本の親会社からするとわかりにくい内容となってしまう問題点も多くあります。


 そのため、日本からは日本の表示形式に合わせた財務諸表作成依頼を受けることが多いのですが、タイでは決められたフォーマットで財務諸表を作成する必要があるため、必要に応じて組替表などを作成する必要が発生します。しかし、このような業務を行うには、日本とタイ両方の会計・税務の相違点やルールを把握した人材が必要であり、特にタイ人スタッフに指導できる人材は少ないという課題もあります。


みなし課税や還付金遅延問題

 税務官は税の還付請求をされた場合、税務調査を実施し、その請求が正当なものであるかを確認し還付金の支払いを実行することになっています。つまり、還付請求を受けるためには必ず税務調査を受ける必要があるのです。しかしそこで問題点・障壁となるのはタイの税務当局は税金の還付請求に対して強く抵抗することが通常で、還付請求の際、厳しい税務調査を受けることになってしまうケースが多々あります。その場合、還付額が減額されることやその他の指摘を受けて追徴課税されるという問題も発生します。


 特にタイの税務担当官には様々な権限が与えられ、財務諸表の数字を修正する権限なども持っているため、市場取引価格は、請求書価格よりも高いとみなし、益金加算等を受けることがあります。そのため、法人税額や付加価値税額(VAT)の納付が少ないと追徴課税を受けたりするという問題も発生する可能性があります。


 輸出型の企業の場合、必然的に還付請求が発生することになりますが、税務調査を受けなければ還付がされないという問題点、また、BOI等の制度により海外からの投資として新規企業の増加により限られた税務担当官数で、全ての税務調査がスムーズに行われないために、数年に渡り還付されずビジネス運営上の障害となっているという問題もよく聞くケースであります。


 多くの日系企業が進出するタイですが、会計実務の面から見た問題点はいまだに多く、各企業はこれらの問題点やリスクを把握したうえでビジネス展開をしていく必要があるのです。タイ国における会計実務では、この記事であげた以外の問題点も発生する場合があります。そのため出来るだけタイの会計・税務に精通した、出来れば日本語での相談先を見つけておくことが肝要です。問題が起きたその時々に適切な対応をすることにより、事業の最適化、被害の最小化を図ることが可能です。


【免責事項】

本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。

Comments


bottom of page