
今年も確定申告の時期がやってきた
年が明けると個人の所得税確定申告の時期が近くなってきたと思う方もいらっしゃるかもしれません。タイでは3月末、日本では3月17日が申告納付期限ですが、海外赴任されている方は給与から源泉徴収されているものの原則として確定申告を改めて行う必要があり、面倒だなと感じる方は少なくないと思います。
必要書類を渡して会計事務所に申告作業を任せる方もいらっしゃると思いますが、必要な書類を集めるだけでも結構大変ですし、後日税理士さんからあなたの昨年度の所得税額はいくらでしたと言われてもその金額が多いのか少ないのかなかなか見当もつかないと思います。そこで今回は確定申告にまつわるあれこれについて思いを巡らしてみたいと思います。
世界では源泉徴収の方がマイナー
タイでも日本でも個人の所得税は給与が支払われる前に源泉徴収の形で差し引かれています。勤めている会社と年収条件で合意して働いていても、その金額を一度も手にすることはないわけです(社会保険も基本は同じ仕組み)。タイでは行われていないようですが日本では会社側が源泉徴収した上で年末調整という作業まで行って年度の所得税額を確定するので、個人で所得税の申告を行う人の方が少数派です。
一方世界では米国をはじめとして源泉徴収を個人で行う国の方がむしろ多数派です。これらの国々で働いて一定額以上の所得のある人にとっては確定申告は必須の作業であり、一方日本では会社側がその作業の大半を負担しているとも言えます。公平性、効率性、網羅性等を勘案し、文化的な背景と相まって同じ所得税の納付という作業のやり方も国によって異なるといったところでしょうか。
自分がいくら所得税を納付しているか知らない人の方が多い
確定申告せずに源泉徴収で所得税の納税が完了すると、自分がいったいいくら所得税を払っているか意識しなくなりがちです。しかし年のはじめに昨年分の源泉徴収票を見ると納付した所得税、住民税(日本)、社会保険の金額が記載されており、多くの方は「こんなに払っているのか?」と驚くと思います。勤め先と合意した年収額とのギャップに納得感のなさを感じる人も少なくないでしょう。
為政者には都合がいい、しかしSNS等の発達により個人の意識は高まっている
納税者が税金の仕組みを知らずに、また関心を持たれずに事前徴収できる仕組みは税金を徴収する側にとっては都合のいい仕組みなのでしょう。ただしメディアが報道するまで問題の所在が顕在化しなかった時代と異なり、現代はSNS等の発達により個人が社会の問題や矛盾に声を上げやすく、情報も瞬時に拡散します。
もちろんSNS上の情報も有象無象ですが、少なくとも個人の問題意識は情報発信入手がしやすくなったことにより為政者にとって国民に関心を持たれない方が都合のよかった制度や仕組みもそのままでは済まなくなってきたとは言えるでしょう。
全員確定申告すればいい、AIが一番利用できる分野
私自身は個人で行うにせよ、会計事務所にまかせるにせよ、働いて所得のある方は全員確定申告をするようにすればいいのではと考えています。確かに最初はとっつきずらく感じるかもしれませんが、毎年の注意事項はユーチューブ等を見れば非常に分かりやすく解説してくれている無料チャンネルも多数あるし、最近は申告作業を手伝ってくれるAIサービスまで出てきています。個人で確定申告を行うハードルは以前より格段に下がってきています。
政治、経済共に先行きに不透明感が漂う現在、個々人が社会の仕組みや税金の使われ方についてもっと関心を持ち、理解を深めることの重要性は高まってきていると感じています。所得税の確定申告を考えることはそのきっかけになると思います。
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「タイはなんでこんなに月次の決算が遅いんだ!」
「タイはなんでこんなに経理スタッフが多いんだ!」
タイで働き始めた日本人の方とお話させて頂くと、このような課題を挙げられる方が多くいらっしゃいます。
タイで決算が遅くなる原因は何か?
社内業務の効率化に向けた予備知識として、知っておきたいタイの会計・税務を動画にしました。お時間のよろしいときにこちらもご視聴頂けましたら幸いです。