DEI(Diversity Equity Inclusion)の行方
- 鎌倉 俊太郎
- 4月1日
- 読了時間: 4分

急速な逆回転
トランプ米大統領が1月に就任してから今までの政策を引っくり返す大統領令を連発していますが、その中の一つに連邦政府によるDEI推進を廃止するというものがあります。
このDEIという概念自体日本にはあまりなじみがなく、よく知らないという方も少なくないと思います。ただ今後の社会情勢の動向を左右する概念でもあり、当然企業経営にも大きな影響を与えるため、今回はこのトピックについてご一緒に考えてみたいと思います。
DEIとは?
DEI(Diversity Equity Inclusion)とは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)の頭文字で、人種や宗教の違いを認める(多様性)、一人ひとりを公平に扱う(公平性)、異なる背景や考え方を尊重して受け入れる(包摂性)の三要素を原則とし、この原則を組織運営や企業経営に反映する考え方のことを言います。
少し前まではDとIだけでDiversity Inclusionという言い方をしていましたが、これに公平性の概念を加えてDEIとするのが最近では一般的になってきました。DEIの考え方はアメリカで人種差別が大きな社会問題となった2020年頃から急速に広まり、主に欧米でDEI推進を宣言する企業や政府機関が相次ぎました。
企業の取り組みと近年の動向
企業経営の現場では異なるバックグラウンドや考え方を持つ社員の個性を最大限引き出すことが企業価値の創出につながるとされ、欧米だけでなく日本でも日立製作所やパナソニックなどの企業が積極的に推進しています。
DEIはイノベーションを起こしやすくし、新たな技術やソリューションの開発につながり、結果企業業績の向上をもたらすことが期待されています。さらにDEIの推進することで多様な人材を引き付けることもその効果とされています。
一方で昨年からDEI推進の一方策として採用時にマイノリティー枠を設定することはかえって逆差別だという声も強まり、DEIの推進を取りやめる企業も急速に出始めています。DEIの推進が企業価値の増大につながったという実証結果がまだ少ないため、企業経営にDEIの考え方を取り入れるべきか、大きく意見が分かれているのが現状だと思われます。
日本企業の取り組み
欧米では人種、国籍、性的志向の多様性受容を促す文脈で語られることが多いDEIですが、日本ではどちらかというと男女差異の解消の趣旨からスタートしている印象です。2023年3月期から有価証券報告書で開示が義務化された内容も女性管理職比率、男女賃金差で、人種や国籍の多様性にまでは至っていません。
SDGs、ESG、資本効率を意識した経営、コーポレートガバナンスの強化等、ここ数年で矢継ぎ早に日本企業は欧米を源流とした新しい考え方や概念への対応を迫られており、DEIと企業経営の関係を咀嚼して取り入れている企業はまだ少数派というのが実際のところではないでしょうか。
グローバル化、人手不足への対応
日本の人口が毎年7~80万人減少し続けている状況下で、日本企業は従来以上に海外の市場を求めてグローバル化を推進せざるをえません。さらに人材の採用に関しても外国人材の積極採用を推進していく必要性が高まっています。
そのような環境下で、欧米で岐路に立たされているDEIにどう取り組むのかは難しい判断が求められる問題だと思います。自社にとって大事な価値観とは何か、どのような人材に来てほしいのか、さらにその考え方が企業価値の創出につながると自信をもって社内外に説明できるのか、今後の日本企業の対応に注目したいと思います。
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