DX動向2025に見る、日本と世界の違い
- 鎌倉 俊太郎
- 8月5日
- 読了時間: 4分

2025年の崖
本年は当コラムで何度か取り上げている経済産業省のDXレポートで警告されていた2025年の崖が顕在化するとされた年にあたります。おさらいの意味で簡単にお伝えすると、2025年の崖という言葉は2018年に経済産業省発表のDXレポートで提唱され、レガシーシステムの刷新、IT人材の育成、新しいIT経営基盤構築に取り組まないと2025年には企業の情報システムの運用が立ち行かなくなり、その結果国際競争力が大きく削がれて国家レベルで12兆円の経済損失が生じるとされました。
その後生成AIが劇的に登場して実社会に急速な普及が進むなど、現実は2018年時点では予想も出来なかった展開になってきています。そのような環境下でこの度独立行政法人情報処理推進機構から「DX動向2025」と題してDXの推進状況について日米独を比較した興味深いアンケート結果に関する報告書が出ました。特にDX推進に悩む経営層の方々には一読いただきたい内容ですが、今回はその内容について私が注目したポイントをいくつかご紹介したいと思います。
日本と米独の違い「大企業と中小企業の差」
まず、日米独の企業は全体としてみればいずれもDXには積極的に取り組んでいるものの、日本では大企業中心で中小企業(特に従業員数100人未満)の取り組みは総じて遅れているのに対し、米独では企業規模でそれほど顕著な差はなく、従業員数100人未満の会社でも結構CDO(Chief Digital Officer)を配置してDXに取り組んでいる点です。
日本は会社数の9割以上が中小企業に分類されている事を考慮すると、社会の中心的存在であるべき中小企業でDXへの取り組みが遅れている点には強い危機感を覚えました。同時に、経営判断における優先順位の違いが特に企業規模の大小で日本と米独で顕著に違うとも感じました。
日本と米独の違い「内向き部分最適と外向き全体最適」
2点目に、DXに積極的に取り組んでいるとされる日本の大企業もその内容は大半が業務プロセスの改善、効率化が中心のいわば内向きで部分最適のDXにとどまっているのに対し、米独は売上利益の増大に直結するようなITを活用したビジネスモデルの構築に主眼がある外向きで全体最適のDXという傾向が顕著になった点です。
DXの定義はそもそもデジタルテクノロジーを活用して新しいビジネスモデルを構築し、会社そのものを変革することだった事を考えると、日本ではそもそもDXはまだ始まったばかりと言えるかもしれません。
日本と米独の違い「人材の不足感VS過剰感」
3点目に、個人的には一番興味深かったのが日本ではDXを推進する人材がとても不足しているという声が強いのに対し、米独では十分いる、むしろ過剰感さえあるという声が多かった事です。
日本では全体の85%の企業が人材の不足感を訴えているのに対し、特に米国では75%の企業が充足していると答えており、DXを推進する人材の捉え方が違うのかと思われるぐらいの差が出ています。求めるスキルセット、雇用形態、人材の流動性等、両国ではいろいろな環境に違いがあり、簡単ではないもの多くの日本企業が悩んでいる根源の問題と言えるでしょう。
他にも日本企業の多くはDX推進の効果を十分感じられていない点、米独では投資とリターンが明確になるようしっかりKPIを設定している点、さらに経営陣のDX推進への理解度やリーダーシップにおいて日本と米独では大きな差がありそうな点などが目を引きました。
DXを推進する上でどのような点に留意しなければいけないのか、うまくいかない原因はどこに求められるのか、「DX動向2025」を一読するだけでも何らかのヒントが得られるのではと感じました。DXを推進しているのに思うようにいかないと感じた時、少し時間をとって眺めてみるのも有益と考え一読をおすすめする次第です。
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