企業内でのデジタル人材育成は花盛り
最近、日系企業が開示している中期経営計画や統合報告書を見ていると、もはや業種を問わずDXへの取り組みが当たり前のように記述されていることに気がつきます。少なくとも10年前にはIT関連の記述がコスト削減策の一部としてぐらいしか出てこなかった事を思うと、隔世の感があります。
ただDXが重要経営課題として認識されるようになったのは結構なのですが、その取り組みとして多くの企業が社内のデジタル人材の育成を挙げており、生成AIの急速な進化がすすむ現状下で従来のデジタル人材育成プログラムが的外れになりつつあるのではと危惧しています。そこで今回はこのテーマについてご一緒に考えてみたいと思います。
人間とITの付き合い方が変わってくる
デジタル人材と言うと、プログラマー、エンジニア、データサイエンティストといった特定のスキルや経験を持った人材と思われがちですが、DXはそもそもデジタル技術を活用したビジネスモデルの革新の事を指すので企業内教育では特定IT技術の習得というよりはより広範囲に一般的になりつつある技術の概要的な知識の習得を目指すプログラムが組まれる傾向にあります。さらにこれらの知識の活用を行うための方法論、たとえばデザイン思考等や各種課題解決手法の研修をあわせて実施する企業もあり、これはこれでとても有効な取り組みと思います。
一方多くの方が気が付き始めていますが、生成AIの登場と急速な進化によって人間とITとの付き合い方が劇的に変わりつつあります。したがって従来はITで出来る事を人間が学習した上で人間がITで行う範囲を設定してシステム構築という順序だったのが、新しいビジネスモデルを生成AIとの対話で仮説を立て、実行するITの構築も生成AIとの対話、さらにツールの選択やシステム構築自体も生成AIに指示して実現するというやり方に急速に変化していくと思われます。
必要とされるスキルと研修は?
それでは今後生成AIを利用して新たなビジネスモデルを構築するにはどのようなスキルが必要になってくるでしょうか?まずは生成AIと効果的な対話を行うには的確な質問力が必要になります。的確な質問を行うには、あいまいな状況で分かっている事とを分かっていないことを峻別し、分かっていない事を可視化して言語化出来る能力ということになります。質問力というよりは説明能力の範疇かもしれません。
また、生成AIは何を聞いてもすぐにもっともらしい回答をしますが、その回答の真贋、妥当性を判断する能力も必要になります。生成AIの回答は論理的でいかにももっともらしいのですが、未だに不正確かつ不適格な内容も少なくないので自分の知識が十分でない領域の内容を生成AI聞いて得られた回答をそのまま利用するのはとても危険です。
結局、生成AIの時代のデジタル人材の育成のためには、広範囲な知識、あいまいな状況を可視化して論理的に説明できる能力の育成がより必要とされるため、特定個別の情報技術の習得よりビジネスベーシックとされていた領域のブラッシュアップに力点を置くべきではと考えられます。
デジタル人材育成と言いながら、ビジネスパーソンとしてのアナログ的なベーシックスキルをより磨く必要が高まってきたという皮肉なオチなのですが、皆様がお勤めの会社の社内研修プログラムはどのような内容でしょうか?もちろん今後生成AIがどこまで実際のビジネスでの現場で活用されていくかにもよりますが、技術の進化が日進月歩の現状下、時々立ち止まって企業内の研修プログラムを見直す必要は出てきそうです。今回のコラムがそのような機会のきっかけになれば幸いです。
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