
タイの繰越欠損金の節税効果
会計監査会社から決算書が提出され、内容を確認したところ、会社の業績は100万バーツの黒字でした。しかし、法人税は発生しないとの説明が付け加えられました。黒字決算なのに、なぜ法人税は発生しないのか?と会計担当者に確認したところ、会社は繰越欠損金を利用したため、法人税納付は不要との回答が返ってきました。
欠損金って何のことだろうと思いつつも、内容を聞ける状況ではなかったというシチュエーションはよくあるお話です。繰越欠損金は将来の税金を減らす節税効果があることから、欠損金の知識があると節税対策に役に立ちます。
欠損金とは何ですか?
欠損金とは、決算調整後の損益計算書(P/L)の当期純損益が確定後、法人税を計算する過程(税務調整)で生じた会社の所得金額が赤字またはマイナス時に表す用語です。つまり、税務上の赤字のことです。会計上の赤字と税法上の赤字の比較図をご参照ください。

欠損金の算出方法
損益計算書の当期純損失 (会計上の赤字)は、必ずしも、欠損金(税務上の赤字)とは一致しません。理由は収益と費用の概念または算出基準が異なるからです。
会計上の損益計算は「収益-費用=利益/損失」
税務上の所得計算は「益金(法人税計算上の収益)-損金(法人税計算上の費用)=所得」
上記の算出方法から、会計上で利益でも、税務上はマイナスになることがあります。反対に、会計上で損失でも、税務上はプラスになり、法人税が発生することもあります。
(計算事例1)

繰越欠損金とは?
当該事業年度に算出した欠損金を翌年以降に繰り越した欠損金を「繰越欠損金」といい、タイでは5年間の繰越が認められます。BOIの法人税免除の恩典がある場合は、免税期間終了後に5年間の繰越ができます。
繰越欠損金の申告書上の表示
繰越欠損金の明細は、以下の法人税確定申告書(P.N.D.50)のように表示されます。
例)12月決算法人の2023年度申告書
2018年欠損金-1,000,000、2019年欠損金-1,000,000、2020年所得2,000,000、
2021年欠損金-1,000,000、2022年欠損金-2,000,000、2023年所得1,500,000

上記の累積から2023年度所得と相殺できる欠損金額は3,000,000THBまでです。
繰越欠損金のメリット
タイの歳入法典第 65 条 ter (12)では、5年以内に繰り越された純損失は会計では費用とみなされませんが、税務上は原則的に費用として処理することが認められます。つまり、欠損金が生じた場合は発生年度から向こう5年間の税務上の所得を控除することができ、節税効果のメリットがあります。
(計算事例2)

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