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執筆者の写真鎌倉 俊太郎

SDGs/ESGに黄色信号が点灯?


SDGs/ESG

ESGに黄色信号が点灯?


 先日、アメリカ上下両院議会が企業年金運用でESG(環境、社会、ガバナンス)に考慮した投資判断を禁じる決議案を可決しました。ESGを推進するバイデン大統領はこの決議案に対して大統領就任後初めて拒否権を発動しました。共和党が過半数を占める下院はともかく、民主党が過半数を占める上院でも一部の民主党議員がESGに反対表明したことになります。


 アメリカ議会はアメリカ国内だけでなく、世界に大きな影響を与える存在です。ESGが機関投資家の投資判断規範であり表裏の関係で企業の行動規範となっていることは当コラムでも何度かお伝えしてきました、ESGが国連で推進するSDGsの思想や考え方を色濃く反映していることを考えると、今回のアメリカ議会の決議はここ数年世界的な潮流となってきたSDGs/ESGに逆風が吹き始めるきっかけとなりかねないと危惧しています。今回はこの問題をご一緒に考えていければと考えております。


SDGs/ESGはもうからない?


 今回のアメリカ議会の決議は、企業年金運用は安定的な投資収益の確保を実施することが重要あり、それ以外の要素まで考慮すべきではないという考えに依るものです。これは1970年代にアメリカで主流だった企業の社会的責任は利益を獲得することのみであるとする考え方に回帰しているようにも見えます。


 一方で21世紀に入ってから、特にここ数年は地球温暖化対策には大きな関心が寄せられており、バイデン大統領も地球温暖化対策を強力にすすめることを公約として掲げて政権が発足しています。先祖帰りのように見えるのは、SDGs/ESGを推進している企業が必ずしも投資家の期待する収益をなかなか上げられていないという現実を反映していることなのかもしれません。


それでは利益追求のみでいいのか?


 環境問題対応は一般に企業にコスト増をもたらします。再生エネルギーによる電力は化石エネルギーによる電力より高くつきますし、原材料の調達、製品の製造もコスト要素だけを考えるのと調達先の人権にまで配慮するのでは当然考慮しなければいけない要素が増える分コスト高となります。


 それでは原点回帰して利益のみを追求したらどうなるでしょうか?社会の企業を見る目は1970年代と大きく変わっています。現代では個人による企業の糾弾もSNSで簡単にかつあっという間にできてしまいます。「あの企業は発展途上国で人権を無視した低廉労働力で製品を生産しているから安値販売できる」とか、「あの企業はカーボンニュートラルに関する取り組みは一切開示していないので何もしていないのだろう」といった評判がSNSで拡散したら、当該企業の経営者は翌日から利益追求より釈明に追われる展開になるでしょう。

取引先からも従来の取引を継続してもらえなくなるもしれず、環境問題に意識の高い社員の離脱といった事態にまで発展するかもしれません。


ルールは変わった


 要は企業経営のルールが20世紀と現在では大きく変わったと言えるでしょう。もちろん利益を上げる事は重要ですし、利益が上げられなければそもそも企業は事業活動を継続できません。ガバナンスを効かせて地球環境、地域社会、人権等の社会課題への配慮を行った上で利益を上げて株主還元を行う事が強く求められる時代に入ったということなのでしょう。


 環境対策をはじめとする社会課題への対応はコスト増なので利益にはマイナスという主張は許されず、両方ともに同じ次元で求められるので、企業経営の難易度は従来より上がっているのが現実だと思います。


誰もが自分事として


 今まで見てきたように、企業を見る世間の目はより厳しく、求められる社会的責任は飛躍的に拡大しました。これは裏をかえせば、企業の活動がそれだけ世界をより良くするために期待された大きな存在であることの証左であるともいえます。


 私たちはビジネスパーソンとして、会社で与えられた仕事をこなして給料をもらうだけでなく、自分たちの活動が社会にどのような影響を与えているのか、思いをはせてみるといいのかもしれません。一人ひとりにできることは限られていても、個々人の活動が企業の活動として集約され、それがさらに世界をより良くする潮流となると考えると、自分の仕事の意義も改めて確認できるのではと考えます。


【免責事項】

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