労働時間規制をどう考えるか ── 日タイ比較から見る生産性
- 鎌倉 俊太郎

- 3 日前
- 読了時間: 4分

労働時間規制が緩和される?
2025年10月に日本で高市政権が発足してから現在の労働時間の規制を緩和すべきではないかとの議論が活発になっています。高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という言葉がすっかり有名になりましたが、ここ数年の働き方改革で労働時間を減少させる取り組みを見直そうという議論が日本では起きています。
労働時間に対する考え方は国によって差があり、国のおかれた状況や国民の価値観も反映されるために一概にこれがいいとは言えないとは思いますが、今回は日本でホットな労働時間規制のトピックをタイと日本の規制内容を見ながらご一緒に考えてみたいと思います。
日タイでの労働時間規制の内容
日本では労働時間の上限を定める労働基準法では一日8時間、週間で40時間が上限とされています。多くの会社では36協定と呼ばれる労使協定を結んで残業は一か月40時間まで、6か月で360時間までとされ、さらに特別協定を結べば月間平均残業時間は80時間、単月では100時間、6か月で720時間までと上限が定められます。
一方タイでは労働者保護法、通称LPAによって一部の危険業務を除いて1日8時間、週48時間が上限の労働時間とされ、労使合意があればLPA省令で定められた専門業務に関しては一日8時間を超えた労働時間が認めらますが、その場合でも週48時間の上限は超えてはならないとされています。労働時間の規制に関しては労働者保護の視点が強いタイの方が厳しい内容となっています。
日本での論調
日本の労働時間が国際的にも長いことが以前から指摘されており、過労死が社会問題として強く認識されるようになった背景もあってここ数年が働き方改革と称して労働時間の規制が強化されてきました。この上限をもっと働きたい人の自由を奪っている、国際競争が激化して日本の衰退がすすんでいる現状ではもっと働かなければ衰退がさらに進んでしまうとして緩和しようとするのが現在の論調です。
一方で現状の最大単月残業時間100時間でもすでに過労死ラインだとする専門家も多くいます。タイのLPAと比較してもその長さは際立っています。もっとも労働時間自体を規制しない国もあり、一概に日本が長時間労働だとは必ずしも言えないかもしれません。
労働時間の考え方
冒頭でも述べたように労働をどのように考えるかは文化、宗教、歴史等、国や民族によって価値観は多様であり、単に時間の長短だけでは判断できない側面もあります。日本では歴史的には労働は美徳とされ、これが長時間労働を引き起こしているという指摘もあります。
一方タイでは仕事より家族を重視する価値観が強いと聞いたことがあります。さらに労働は罰に近いというとらえ方をする国や民族もあり、労働時間が長いことはより重い罰を受けているという考え方もあります。国や民族により、また時代の変遷によって労働時間に対する考え方は多様性が増しているのが現状です。
生産性が一番大事なのでは?
もっとも同じ時間働いたとしても、新人とベテランの生産性は数倍以上の開きがあります。また同じ力量の人でも集中力には個人差があり、同じ労働時間でもやはり生産性には大きな差が出ます。現在の労働時間規制緩和の議論では生産性の向上への取り組みは企業の個別競争戦略そのものだとされて各企業ごとの取り組みにとどまっています。
とはいえ人の働き方は企業によって大きく異なるものではないと思います。国際的な競争力を高めるのが目的なのであれば生産性向上に資する労働時間の規制は働く人の安全と健康を守ることを最優先に決め、今真剣に取り組まなければいけないのは生産性をいかに高めていくのかという点なのではないでしょうか。労働時間の議論も大事なのですが、それ以上に国家レベルで生産性の向上に取り組む方が国際的な競争力を高めていくためには重要ではと思う今日この頃です。
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