新卒一括採用は過去の話し?
- 鎌倉 俊太郎
- 1 日前
- 読了時間: 4分

春の風物詩
やや季節外れの話題で恐縮ですが、毎年4月になると桜の花とともに日本の都市部で男女共にダークスーツ、いわゆるリクルートルックの若者たちの姿をよく見かけます。彼、彼女らの多くは4月1日から就職した新卒の新入社員ですが、日本では一般的な新卒一括採用は今後欧米のように一般的ではなくなる可能性が出てきています。
タイでも新卒一括採用は一般的ではないと聞いていますので、日本で新卒一括採用で入社した方がタイに駐在して現地で採用活動に関わるとその違いに驚いた経験をされた方も少なくないかもしれません。どの企業も成長戦略実現のためには優秀な人材の確保が必須であり、今回はこのテーマについてご一緒に考えてみたいと思います。
なぜ日本では新卒一括採用が一般的なのか
日本では戦後、高度成長期に大量の労働力を確保する目的で新卒一括採用が採用方法の主流となって現在に至ったとされています。終身雇用、年功序列といった労働慣行とも新卒一括採用は相性がよく、学校教育の場でも職業訓練的な内容がほとんどなかった事から
新卒学生を一括採用して一から教育するのが自然と企業の役割となりました。
就職する側にとっても職業経験がまったくなくても雇用を保証してもらいながら職業人として育成してもらえるのは人生の安定のためにも好ましく、企業と働く側双方にとってメリットがあった新卒一括採用方式が日本では一般的になりました。
世界ではむしろ新卒一括採用は例外
一方、欧米、タイをはじめ、世界の多くの国々では必要な人材をその都度採用するいわゆるジョブ型採用の方が一般的で、雇用を保証しながら職業経験のない人を採用して一から教育するというやり方は一般的ではありません。学生も職を得るために、インターンシップに参加したり、ビジネススクール等で新たに学んだりして職業経験を積んだり必要とされるスキルを習得して求職するスタイルが一般的です。
新卒一括採用制度は、一度に大量の職業人を効率的に育成できる仕組みとしてバブル期以前は日本企業の強さの秘密の一つとして脚光を浴びた時期もありました。
日本独自のシステムは制度疲労を起こしつつある
新卒を一括採用して企業ごとに職業訓練を行い、年功序列で昇進させていく仕組みは高度成長期、大量消費時代にはうまく機能した仕組みでした。しかし顧客である消費者の価値観は多様化し、同質性の高い企業ではイノベーションが起きにくいとされ、多くの伝統的な大企業は変革に苦労しているようです。
また新卒一括採用が主流の会社では中途入社者は疎外感を感じがちで、中途入社した優秀な方々の能力を十分に生かし切れていないとの声もよく聞きます。
近い将来
日本の大企業では、富士通が新卒一括採用を辞める事を2025年3月に発表しました。他にも数社の大企業が職種を限定して中途採用を重視する方針を明確にしています。今後も多くの企業で同様の動きが見られそうです。
日本では少子化が急速に進み、企業は成長機会を求めてよりグローバル化を推進しなければならない状況下で、人材の調達が日本国内の新卒一括採用中心では、いずれ企業活動の遂行そのものに支障をきたす恐れがあります。
今まで当たり前と思っていた新卒一括採用制度も大胆な見直しが必要になるタイミングが来るのはそう遠くないかもしれません。今年も桜の季節に丸の内のオフィス街を多くのリクルートルックの若者が行き交っていましたが、彼ら彼女らを見ながら「何年度の入社?」という社員同士の会話が昔話になるだろうなどと考えてしまいました。
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「タイはなんでこんなに月次の決算が遅いんだ!」
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