日本と違うタイの個人所得税制度 - 実務で押さえるべき3つのポイント|日本の常識はタイの非常識 Part.13
- 倉地 準之輔
- 1 時間前
- 読了時間: 4分

タイの経理と日本の経理は同じではない
タイでの経理業務には、日本での経験や常識がそのまま通用しない場面が数多くあります。3月は、タイにおける個人所得税の確定申告期限(原則3月末)が迫る時期です。今回はそのタイミングにあわせ、個人所得税に関する実務上のポイントを取り上げます。
日本と制度が大きく異なる部分もあれば、実は日本と似ているのに十分に認識されていない部分もあります。「違い」だけでなく「共通しているのに見落とされがちな点」も含めて整理することで、日タイ間の制度理解をより立体的に捉えていきます。
タイでは原則、自分で確定申告を行う
日本では、一般の給与所得者については会社が年末調整を行うため、個人が確定申告を行わないケースも少なくありません。
一方タイでは、一定の所得がある原則すべての個人が確定申告を行う必要があります。これは現地採用社員や駐在員としてタイで働く日本人も例外ではありません。たとえ年間の源泉徴収によって税額がすでに全額納付済みであり、追加納税が発生しない場合であっても、原則として申告義務があります。
確定申告の締切りは毎年3月末(インターネット申告の場合は数日延長)です。実務上は会社や外部専門家が対応しているケースも多いですが、『誰が申告しているのか』『どのような内容で申告されているのか』といった点は確認しておくことが望ましいでしょう。
通勤手当も原則、個人所得税の対象になる
日本では、合理的な運賃に基づく通勤手当は月額15万円まで非課税とされています。そのため、通勤定期代を会社が精算しても、それが課税所得に含まれることは通常ありません。
しかしタイでは、通勤手当を一般的に非課税とする明確な規定はありません。条文上、「職務遂行のために必要な交通費」は非課税とされていますが、これは通常、出張や業務上の移動を想定したものと解釈されています。結果として、自宅とオフィス間の通常の通勤にかかる手当は、原則として課税対象とされます。
日本の感覚で通勤手当制度を設計すると、想定外に個人所得税負担が増える可能性があります。人事制度設計の段階で、この制度差を理解しておく必要があります。
タイでも投資により個人所得税を減らすことができる
日本では、iDeCoや企業型DC、NISAなどを通じて、将来への投資を行いながらその年の税負担を軽減する制度があります。
タイにも、同様に個人所得税の控除対象となる投資制度が存在します。2025年時点では、『RMF(退職年金投資信託)』や『プロビデント・ファンド』などについて、一定の条件のもと最大500,000バーツまで所得控除が可能です。また、ESG関連ファンドへの投資も、一定の制限の範囲内で最大300,000バーツまで控除対象となります。
これらには保有期間や引き出し条件の制限がありますが、タイに長期滞在する方にとっては、有効な節税手段となり得ます。「タイは日本と違う」と思い込みがちですが、制度としては共通する発想も存在することを知っておくことが重要です。
まとめ
今回は個人所得税をテーマに、日本とタイの制度の違いと共通点を整理しました。
確定申告の仕組みや通勤手当の課税ルールは、日本とは明確に異なる部分です。一方で、投資による所得控除の制度は、日本と同様にタイにも存在します。「日本ではこうだから」「タイは全然違うから」と単純化してしまうと、制度の本質を見誤ります。違いを理解することはもちろんですが、共通点を正しく認識することもまた、実務を安定させるための重要な視点です。
個人所得税は個人の問題であると同時に、企業の人事制度設計や従業員サポートにも直結するテーマです。制度を正しく理解し、思い込みに頼らない運用を心がけることが求められます。
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