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話が通じない?海外経理の落とし穴 ― 日本の常識はタイの非常識 Part.11


話が通じない?海外経理の落とし穴

タイの経理と日本の経理は同じではない


 タイでの経理業務には、日本での経験や常識がそのまま通用しない場面が数多くあります。今回も、日本では当然とされる実務が、タイでは異なる運用となっている事例を3つ取り上げます。小さな違いに見えても、放置すると誤解やトラブルの原因となりかねません。日タイ間の制度・文化のギャップを理解し、実務に活かせるヒントをお届けします。


経理だからといって仕訳で議論できるわけではない


 日本では、経理業務に従事する人員は、学歴に関係なく簿記を学び、複式簿記の考え方を通じて経済取引を仕訳で表現する訓練を受けていることが一般的です。新しい取引や特殊なケースに出会った際でも、「借方・貸方でどう表現するか?」という視点から判断や説明ができるのが、日本の経理実務の特徴でしょう。


 一方、タイでは会計学部出身の人材が経理職に就くものの、日本のような簿記検定制度の普及はなく、仕訳ベースでの理解や発想が不足しているケースも見られます。実務でも「債務担当」「売掛担当」など業務範囲が分断されており、担当者はシステム入力だけをこなしていることもあります。


 そのため、「この取引はどのような仕訳になるか?」と聞いても、答えが返ってこないことがあります。「経理経験あり」という言葉の裏にあるスキルの中身は、日タイで大きく異なる可能性があるという前提で、採用や評価の場面で丁寧な確認が必要です。


会計と税務の混同が見られる


 日本では、簿記教育で「会計と税務は別物」と学び、交際費や減価償却などでも、会計処理と税務上の扱いを区別することが当たり前です。会計では費用として計上し、税務では損金不算入とするような申告調整も一般的に行われます。


 しかしタイでは、この区別が実務上あいまいなまま、「税務でNGだから会計でもNG」と誤って判断されることがあります。たとえば領収書がない経費を「会社で処理できません」と断じられる場面もありますが、これは税務上は損金算入できないという話であって、会計上は会社費用としての実態がある場合には費用計上されるべきものです。


 こうした混同により、帳簿が実態と乖離する可能性が生じます。説明を求めても「ダメなものはダメ」と返されることもあり、会計と税務の考え方を整理し、現地スタッフとの共通理解を丁寧に構築することが求められます。

 

会計証憑は紙を見てチェックするのが当たり前、という実務文化


 日本では、会計証憑や仕訳は基本的に画面上で確認され、ペーパーレス化も経理業務に浸透しています。しかしタイでは、「証憑はまず紙で確認するもの」という文化が根強く、PDFがオンライン上手元にあっても「紙がないから作業できない」とされることがあります。


 もちろん、タイでは紙の原本保存が法令で求められており、紙自体は否定すべきものではありません。ただし、「紙が届かないと仕事ができない」という状態が常態化していると、実務の停滞や非効率を招くことになります。


 また、紙前提の運用は「どうせ紙が必要だからデジタル化しても意味がない」といった考えにつながり、クラウド会計や業務ダッシュボードといったデジタル推進の障害になります。紙ベース文化の前提を理解しつつ、段階的な運用改善を目指すことが現実的です。


まとめ


 今回取り上げた3つのテーマ――仕訳での思考の有無、会計と税務の混同、紙ベース文化の根強さ――はいずれも、「同じ“経理”という言葉でも、その中身や価値観が日本とタイでは大きく異なる」ことを如実に示しています。


 こうした違いは、一見すると些細なようでいて、実務レベルでは業務設計、採用、教育、制度構築の全てに影響を及ぼす要素でもあります。「前提が違う」ということを前提に、現場とのすり合わせを重ねていくことが、誤解を防ぎ、健全な経理体制を築く第一歩となるはずです。



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タイの経理 - 日本の常識はタイの非常識

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