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執筆者の写真倉地 準之輔

タイの個人所得税について知っておいた方がよい3つのポイント


タイの個人所得税について知っておいた方がよい3つのポイント

タイの個人所得税とは


 タイの税法上、タイの個人所得税の課税対象とみなされる所得を稼得した個人は、タイで個人所得税を納付しなければなりません。税率は累進課税で最大35%となっており 、所得が多い人ほど多くの税金を負担しなければいけない仕組になっています。


 日系企業で勤務する駐在員の個人所得税は会社負担となっていることが多く、考えたことがない方もいるかと思いますが、重要な税金であることには変わりがありません。そこで本稿ではタイの個人所得税について知っておいた方がよい3つのポイントについて解説します。

 

① 最近課税範囲が広がりつつあること

 

 タイの税法において、『タイ居住者が外国で得た所得(タイ国外源泉所得)について、タイにその所得を持ち込んだ場合には、タイで個人所得税の対象となる』という規定があります。この規定について、2023年度までは所得を得た年度にタイに持ち込んだ場合のみ課税対象とするという解釈が取られていました。しかし、2024年度からは、所得を得た年度に関係なく、所得をタイに持ち込んだ場合には個人所得税の対象となるという形で、課税範囲が拡大されました[1]


 また、最近では仮に所得をタイに持ち込まない場合であっても個人所得税を課税するように法令を改正するという動きもあります[2]。このように、個人所得税の課税範囲が拡大し、結果として納税しなければいけない個人所得税の金額も増える傾向にあることを理解しておくと良いでしょう。

 

② 納税が誤っていた場合、怒られるのは個人であること

 

 先述の通り日系企業で勤務する駐在員の個人所得税は会社負担であることが多く、結果としてその申告や納税プロセスは会社主導で実施されることが多くなります。ここで、仮にプロセスに誤りがあった場合、タイの歳入局からの罰金等の対象になるのはあくまで個人であることを理解しておきましょう。


 例えば、本来個人所得税の計算対象に含めるべき金額(例:タイの職位に基づいて支給されている日本での留守宅手当)が含まれておらず、結果として納めるべき個人所得税が過少申告になっていたという場合であっても、その過少申告について追加納税額や罰金等を負担する必要があるのは個人である、ということになります。最低限でも自分の名前で申告・納税されている個人所得税の額がどういうロジックに基づいて計算されているかについては理解しておくことが推奨されます。

 

③ 税額を抑える方法はそれなりに存在していること

 

 インパクトは限定的ですが、個人所得税を抑える仕組が存在します。例えば日本のNISAに類似した制度として、退職投資信託(RMF)や特別貯蓄年金(SSF)といった投資信託等に投資した額については最大500,000バーツの所得控除が認められています[3]。また、2024年5月1日~11月30日に旅行した場合、その旅行費用等の最大15,000バーツまで所得控除が認められる旨も最近発表になったところです[4]


 個人で個人所得税を負担している方からすれば合法に個人所得税を減らすことのできる有用な方法ですし、駐在員であってもこの個人所得税の会社負担額が会社の費用計上になっているのであれば、個人所得税を減らすことは間接的に会社の業績を向上させることにもつながります。

 

どうすればよいのか?


 タイの個人所得税について重要なポイントについて解説してきました。他方、タイの個人所得税の申告フォームはタイ語で記載されており、日本人がいきなり自分で申告・納税を行うのが簡単ではないのも事実です。また、実際の申告・納税にあたって判断に悩むことも出てくると思います。そういった場合は、会計事務所のような外部の専門家に相談するというのも一考の価値があります。本稿が皆様がタイでビジネスをする上での一助となれば幸いです。 


[1] (参考記事)タイ居住者に関する国外源泉所得の課税範囲の拡大について(続報)https://www.xn--eck8amv6hzkm14qbb8bd22cpok.com/post/personalincometax 

[2] Bangkok Post. (2024, June 5). New overseas income rules proposed https://www.bangkokpost.com/business/general/2805305/new-overseas-income-rules 

[3] JETRO. (2024, April1). タイ・税制 https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/invest_04.html 

[4] Bangkok Post. (2024, June 5). Cabinet okays low season stimulus https://www.bangkokpost.com/business/general/2805195/cabinet-okays-low-season-stimulus 


【免責事項】

本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。


 
タイの個人所得税について知っておいた方がよい3つのポイント

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