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タイの経理 - 日本の常識はタイの非常識 Part. 5


タイの経理 - 日本の常識はタイの非常識 Part. 5

タイの経理と日本の経理は同じではない


 タイで株式会社や駐在員事務所を設立すると、経理業務は日本本社とは切り離し、タイ独自の法制度や実務慣習に則って進めなければなりません。日本で当たり前とされている経理のやり方をそのまま適用しようとすると、思わぬ違いや戸惑いに直面することがあります。


 本稿では、日本の実務経験を前提とした場合に特にギャップを感じやすい、タイ特有の経理事情を3つ取り上げてご紹介します。


通勤手当は個人所得税の計算上非課税である


 日本では、最も経済的かつ合理的な経路による通勤手当や通勤定期代は、月額15万円まで非課税扱いとなっており、多くの企業で実費精算または定額支給が一般的です。


 一方、タイではこのような非課税枠の制度は存在せず、自宅からオフィスまでの交通費を「通勤手当」として支給した場合、それは通常の給与と同様に課税対象となる所得と見なされます。ただし例外もあり、たとえば出張やオフィス外での業務命令に基づく移動費については、「業務上必要な旅費」として非課税扱いが認められる場合があります。


 つまり、日常の通勤と業務上の出張は税務上明確に区別されており、通勤手当を良かれとおもって支給したら、個人所得税が増えてしまう、という状況になってしまいます。制度設計に当たっては、慎重な設計が必要です。


貸倒引当金の繰入額は損金になりうる


 日本の法人税法では、将来の貸倒れに備えるために繰り入れる「貸倒引当金」は、一定の計算方法と限度額のもとで法人税計算上の損金として認められます。これはリスク管理の一環として会計上も税務上も広く受け入れられている制度です。


 しかしタイでは、一般企業において貸倒引当金の繰入は原則として税務上損金算入できません。たとえ会計上引当を計上していても、それはあくまで会計上の調整項目であり、法人税申告書の上では加算(=否認)されるのが通常です。


 そのため、実際に債権が貸倒れとして認定されるまで税務上の損金処理はできず、日本的な「リスク備えとしての引当」をしたとしても、その分法人税を支払う必要が残ります。日本での発想がそのまま通じない点に注意が必要です。


会計監査人は“会社に来る”のが普通


 日本では、会計監査の過程で公認会計士が会社オフィスに訪問(往査)し、帳簿・証憑・資産状況などを直接確認するのが一般的です。棚卸資産の実地確認や工場設備の視察など、現地訪問を通じた監査がある種「当然」と考えられています。


 一方、タイでは、監査人が必ずしも企業オフィスを訪問するとは限りません。企業が外部の会計事務所に会計記帳を委託している場合、監査はその事務所で完結し、企業の現場に一度も足を運ばないまま監査報告書が作成されることも珍しくありません。


 また、棚卸資産や固定資産の実地確認が省略される場合もあり、日本側が監査人に「いつ来社するのか?」と問い合わせて初めて、その必要がないという説明を受けて驚くこともあります。監査人に期待する“関与の深さ”や“現場確認の頻度”についても、日タイ間でのスタンスの違いに留意が必要です。


まとめ


 今回取り上げた3つのポイントは、日本企業がタイで事業を展開するうえで、特に見落としやすい実務上の違いです。通勤手当の課税、貸倒引当金の否認、監査人の関与度合いなど、日本の慣習を前提にすると「なぜそうなるのか」が理解しづらいことも多くあります。


 日本の常識をそのまま適用するのではなく、現地の税務・会計慣行を理解したうえで、柔軟かつ実務的な運用体制を築くことが、タイにおける経理・財務運営の安定化につながります。



【免責事項】

本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。


タイの経理 - 日本の常識はタイの非常識

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