知っておきたい!タイのVATの仕組みと注意点
- 深澤 チトラートン
- 53 分前
- 読了時間: 5分

タイの付加価値税(Value Added Tax)と日本の消費税(Consumption Tax)
タイにおける付加価値税(VAT)は概ね日本の消費税(CT)と同じ、と考えて差し支えありません。どちらもモノやサービスを購入した際に課税される間接税で、価格に上乗せされる形で徴収されます。消費者から見るとタイの付加価値税(VAT)も日本の消費税(CT)もほぼ同じように「モノやサービスを購入したときにかかる税」です。
付加価値税(VAT)の納税方法
付加価値税(VAT)は税負担者(モノやサービスを購入した人)と納税者が異なる間接税に分類されます。近い例ですと、会社員の給与明細に記載されている源泉税は、税負担者である社員が税務署に納付せず、会社が代わって納税しています。付加価値税も同様で他者から預かった税金をお店や企業などが税務署に納税しています。モノやサービスを購入した人自身が付加価値税を納付しに行くということはありません。
付加価値税(VAT)の納税義務者=課税事業者
タイでも日本でも課税売上高等の一定要件に該当した場合、VATまたはCTの納税義務が生じ、課税事業者と見なされ、税務署にVAT登録事業者(申請様式P.P.01)または消費税納税事業者届出書を提出する必要があります。
タイのVAT登録事業者の注意点として、VAT登録事業者届出書が税務署に受理された日からVAT申告義務が生じ、納付金額がなくても、毎月、税務署に付加価値税(VAT)を申告する必要があります。
【誤認あるある事例】
事例1. VAT登録事業者を登録したが、売上がない月は、翌月のVAT申告は不要?
回答1. 納税事業者登録後、売上がない場合、VATをゼロ申告しなければなりません。
事例2. VAT登録事業者を登録していないので、VATも源泉税も納付は不要?
回答2. VAT登録事業者の未登録でも、給与や家賃支払い時に控除した源泉税があった場合
会社は翌月にその預り源泉税を税務署に納付する義務が生じます。
事例3. 会社は活動停止(休眠)をしたので、VAT納税申告は不要?
回答3. 所轄税務署にVAT登録抹消の許可を受けるまでは会社は活動停止または事業活動がなくても、毎月のVAT申告が必要です。
納税の仕組み
VAT登録事業者において、VATは物品売買やサービス提供の取引で生じた税額のすべてが税務署に納税されるかということではありません。
【VATの基本的な考え方】
① 商品やサービスを購入時の「消費」にかかるVATは、最終的に負担するのは消費者です。
② お店や企業は一旦、 VATを預かる立場であり、翌月に預かったVATを計算し、税務署に納付します。
③ お店や企業が販売時に消費者から受け取ったVATは「売上VAT/ 仮受VAT/ Output VAT」といい、原料等の仕入時に支払ったVATは「仕入VAT/仮払VAT/ Input VAT」といいます。
④ 現時点(2025年9月)において、タイのVAT税率は7%です。
【VATの納税方式】
売上VAT − 仕入VAT = 納めるVAT
事例1. 顧客に商品を税込1,070THBで販売し、材料仕入時に税込535THBを支払った。
納税額は、売上VAT 70THB-仕入VAT 35THB= 35THB
事例2. 海外の顧客に商品を輸出し、1,000THBで販売した。そして、タイで材料仕入時に税込535THBを支払った。
納税額は、売上VAT 0THB-仕入VAT 35THB= 0 THB(申告のみ)
【誤認あるある事例】
事例1. VAT納付は会社の費用である?
回答1. 顧客から預かったVATを税務署に納付するため、会社の費用ではありません。
事例2. 生産、仲買、小売と進む毎にVATが生じます。これは二重課税になっているか?
回答2. 生産、仲買、小売と進む毎に生じたVATは相殺される為、二重課税にはなりません。
例えば、B社が、C社から品物を仕入れ、エンドユーザーのAに販売した場合

B社はAから預かった売上VAT 70THBの納税義務は有るが、C社に支払った仕入VAT 35THBについてはC社がB社に代わって納付するので、B社は納税義務のある70THBからC社がB社に代わって納付する35THBを差し引いて納税することになります。
上記の例において、税務署に納付される付加価値税(VAT)の額は70THBとなります。
これは、エンドユーザーAが支払った70THBということになり、B社とC社は、それぞれ35THBを納付しているということになります。
なお、多くの会社では、上記B社のように税負担者と納税者の両方の役割を持つことから、他者から預かったVATと他者に預けたVATが存在します。それぞれを相殺し、他者から預かったVATが多い場合、その差額を納付しています。
最後にこのような仕組みを持つ間接税については、税の滞納があった場合、「預かった税金」を納めていないということになり、加算税や延滞税が課されるため、納税期限に注意する必要があります。
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